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福岡地方裁判所小倉支部 昭和55年(ワ)27号 判決 1982年8月18日

原告

広津登志子

被告

木下重治

ほか一名

主文

一  被告らは原告に対し各自金三二六、六〇五円と、これに対する昭和五五年一月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その四を原告、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は第一項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

別紙の第一のとおり

二  被告ら

(一)  原告の請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二主張

一  請求原因

別紙の第二のとおり

二  被告らの答弁

(一)  請求原因二の事実は認める。

(二)  同三の事実は知らない。

(三)  同四は争う。

三  抗弁

原告は、本件事故による損害(治療関係費を除く)につき自賠責保険金合計一、二五八、八〇〇円(うち七五〇、〇〇〇円は後遺障害分)の支払をうけ、また被告らから一〇〇、〇〇〇円の支払をうけている。

四  原告の答弁

抗弁事実は認める。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因二の事実は当事者間に争いがない。

二  成立に争いのない甲第一号証の一、二、同第三号証の一、二、同第八、九、一一号証、乙第一ないし四号証と原告本人尋問の結果(第一回)によれば請求原因一、三の各事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。

三  以上の事実によれば、被告要は民法七〇九条、同重治は自賠法三条により、原告が本件事故によつて受けた損害について賠償する責任(不真正連帯)を負うというべきである。

四  そこで、本件事故によつて原告が受けた損害について検討する。

(一)  (休業損害)

成立に争いのない甲第三号証の一、二、同第一一号証、原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる同第四、五号証によれば、原告は昭和五三年九月二四日から同五四年一二月三一日までの間には本来総額一、三三六、二六八円(二、九二四円×四五七日)と賞与四〇、〇〇〇円(合計一、三七六、二六八円)を当時勤めていた訴外株式会社新九州互助センターから支給を受けるべきであつたところを、本件事故による前記傷害のため休業を余儀なくされ、その結果、右期間中に右訴外会社から原告が実際に支給を受けた給与の総額は三五九、九三〇円にとどまつたことが認められる。ただし、原告本人の供述によれば同五四年三月の休業は親族の事情によるものも含まれていることが認められるから、同月についてもその前後各二か月(合計四か月)の平均支給額である六〇、九三三円程度の給与の支給を本来受けられたものと認めるのが相当である。

そこで、原告の右休業による損害としては、本来受けるべき給与総額一、三七六、二六八円から実際の支給総額三五九、九三〇円と右昭和五四年三月分六〇、九三三円を控除した金額である九五五、四〇五円の限度で認めるのが相当である。

(二)  (慰謝料)

原告は、本件事故により前示のような通院加療を要し、前示のような症状を伴つた傷害を受けたうえ、原告本人尋問の結果と成立に争いのない甲第一三号証によれば、なお自賠法施行令二条別表一四級一〇号に該当する後遺障害が存することが認められることを考慮すると原告の慰謝料七〇万円の請求は相当というべきである。

(三)  原告は本件事故による損害として、原告が本件事故後購入したあんま器、イオンマツトレス、座いすの代金相当額の賠償を請求しており(請求原因四の(二)の(2)のないし(4))、成立に争いのない甲第三号証の一、二、同第一一号証によれば原告が本件事故によつて負つた外傷性頸部症候群および腰部挫傷に対しては、あんま鍼灸治療の必要があることが認められるが、原告本人尋問の結果によつても右各器具が、あんま鍼灸に代わる医療効果を有するものであることを証するにたりず、他に右事実を認めるにたる証拠はないから、原告の右請求は失当というべきである。

また、原告の子供の世話等をするため仕事を休んで東京から来た姉への補償金(請求原因四の(二)の(1))については、原告本人尋問の結果によつても、右補償金が本件事故により通常生ずべき損害または予見可能な損害であると認めることはできず、他に右事実を認めるにたる証拠はないから、右請求も失当というべきである。

五  原告が本件事故による損害(治療関係費を除く)につき自賠責保険金合計一、二五八、八〇〇円と被告らから一〇〇、〇〇〇円の各支払を受けたことは当事者間に争いがない。

六  以上の事実によれば請求原因四の(五)については三〇、〇〇〇円の限度で認めるのが相当である。

七  本件訴状送達の日の翌日が昭和五五年一月二五日であることは本件訴訟記録により明らかである。

八  以上の事実によれば、本訴請求のうち被告らに対し各自金三二六、六〇五円の損害金と、これに対する昭和五五年一月二五日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大見鈴次)

別紙

第一 請求の趣旨

一 被告らは連帯して原告に対し、金一、六一三、三三八円およびこれに対する昭和五五年一月二五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二 訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに第一項につき仮執行の宣言を求める。

第二 請求原因

一 被告木下要は、昭和五三年九月二三日午前一〇時三〇分ごろ別府市十文字原テレビ塔から西約一キロ先の道路上において、前方注視を怠りかつ車間距離を十分とつていなかつた過失により、自己の運転する普通乗用車(大分五は六九六八号)の前部を、先行車両の停車に伴つて停車した武智和昭運転のマイクロバス(北九州二二さ一六九二号)の後部に追突させ、右マイクロバスに同乗していた原告に傷害を負わせた。

二 被告木下重治は、前記木下要運転車両を保有してこれを日頃自己のため運行の用に供していたものであり、本件事故について事故について自賠法三条の規定により賠償責任を負う者である。

三 本件事故により原告は、外傷性頸部症候群、腰部挫傷の傷害を負い

(一) 昭和五三年九月二三日から昭和五四年二月二三日までの間北九州市内の健和総合病院において通院治療を受け(実治療日数五三日間)たが、昭和五四年二月二三日被告らのたつての希望で通院治療を打ち切りその後は自宅療養を始めた。

(二) ところで、右自宅療養後も原告は前記傷害に伴う肩こり、腰痛、顔のはれ等になやまされ、自宅であんま器、座いす、イオンマツトレス(腰の治療器)等を利用する外、腰のしつぶを今日まで常に続けている状況にある。

四 本件事故による原告の損害は次のとおりである。

(一) 休業損害 一、〇一六、三三八円

昭和五三年九月二四日から昭和五四年一二月三一日までの四五七日間の期間に原告が事故当時勤めていた株式会社新九州互助センターより本来受けるべき賃金額金一三三万六、二六八円(二、九二四円×四五七)から実際に受けとつた賃金額金三五万九、九三〇円を差し引いた金額に昭和五三年度と同五四年度に支給されるはずであつた賞与金四万円を合計した金員。

(二) 雑費 三〇五、八〇〇円

(1) 東京より仕事を休んで五八日間原告や原告の子供の世話をしに来た姉への補償金二一万円。

(2) あんま器 七、八〇〇円

(3) 座いす 三、〇〇〇円

(4) イオンマツトレス(腰の治療器) 八万五、〇〇〇円

(三) 慰藉料 七〇万円

通院期間が一五四日間であること、その後被告らの懇請により通院を打ち切つたものの、その後も腰痛、肩こり等に悩まされ続け現在では仕事も休職して三人の子供を抱えて生活に窮している原告の状況、更に後遺症も一四級で残存していること等の状況から判断して、慰藉料は少くとも金七〇万円が必要である。

(四) 損害の填補

以上(一)乃至(三)の合計は金二、〇二二、一三八円となる。

ところで、一方、原告はこれまで自賠責保険より休業損害及び慰藉料として金五〇万八、八〇〇円、被告らより金一〇万円の合計金六〇八、八〇〇円を受領している。

そこで、右合計金より受領額を差し引くと、結局原告の残存する損害金は金一、四一三、三三八円となる。

(五) 弁護士費用

本件については、弁護士費用の中、金二〇万円を事故に基く損害として被告らに負担させるのが相当である。

(六) 以上より、本件事故に基づく原告の損害額の合計は金一、六一三、三三八円となる。

五 よつて、原告は被告らに対し連帯して右損害金一、六一三、三三八円とこれに対する本件訴状送達日の翌日である昭和五五年一月二五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

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